Triangle Love Game
──STAGE 4──
心的外傷後ストレス障害──PTSD。
俗に言うトラウマのことだ、と高耶は聞いたことがあった。
これが人格分裂を引き起こす要因であるという。
過度の躾という名の虐待、謂れもない暴力、そして、性的虐待───。
自分には耐えられない苦しい記憶を、もう一つの人格、もう一人の自分に押し付け逃げる。
そんなことは、最初からなかった。
自分はそんなことは知らない、と。
多重人格を治す──人格を統合するには、自分のもう一つの人格の存在を認知し、トラウマとなった事実と決着をつけなくてはならない。
気づけば高耶は部屋を飛び出し、直江の部屋へと向かっていた。
薄暗い廊下をゆく。
道程はたったの数メートルなのに、高耶にはやけに遠く感じられた。
目の前に、固く閉ざされた扉があった。
扉の向こうに『直江』がいる。
扉の向こうの青年は、どんな顔をして何を思っているだろう。
泣いているのか、笑っているのか、狂っているのか…それとも。
高耶には分からない。
この部屋に辿り着いたこと───。
胸を刺すこの思い───。
直江を思う気持ちは、
同情なのかそれとも────。
不毛だと思う。それはわかっている。
自分を辱めた男に自ら会いにきて、話をしようと思っていることなど…。
わかっていても止められない。
止まらないこの思いの正体は、高耶には分からなかった。
空には星もなく、月だけが浮かんでいる。
何もかも見透かされているような、そんな月。
それでいて儚げで今にも消えてしまいそうな月。
月が、見ている。
青白い月だけが高耶を見ている。
扉を開かんとする高耶を静かに見守っている。
あとがき
展開がシリアスなまま…。
そして暗い。
テーマがテーマなだけに、どんどん重くなってきました。
最近気づいたんですが、某BLゲーも二重人格モノだったんですね。
ちょっとはまりそうです。<br>
2004.6.24 鷹夜那岐
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