Triangle Love Game
──STAGE 3──
幼い頃、親から肉体的な虐待を受け続けた子どもは、自己防衛のために、その行為を受けているのは別の人格だと思い込むらしい。
汚らわしい行為、苦痛でしかない行為を受けているのは自分ではない…そう信じたいが故に。
自分の中の別人格は、自身の成長とともに育ち、いつしか頻繁に表面に出てくることがあるという。
本人が知らないうちに、その人格が一人歩きする。そんな人間も、世の中には存在するのである。
その人格は、本人の性格とは全く正反対の性格をもつ。
虐待により押さえ込まれた精神は、その反動で、そうありたいと思った人格として表面化するらしい。
自分は何者なのか…。
見ず知らずの他人が自分を知っている、恐怖。覚えのないことで責められる、苦痛。
目覚めると、ベッドの上。明らかに情事の後と分かる気だるさ。傍らを見遣る。
───顔も知らない赤の他人がいる。
眩暈がする。吐き気もある。なぜ、自分はこんなところにいるのか!しかも赤の他人と寝ているなんて。
分からない。わからない。ワカラナイ……。
夢だと思いたいのに。背中の爪痕から感じられる、紛れもない痛み。
ここ数年、リアルな夢ばかり見る。非現実的で、でもどこか現実味のある『夢』。
自由奔放に生きてみたいと思っていた。人の目を気にせず。社会的立場にも捕らわれず。
好き勝手に、自分勝手に。ただ自分のためだけに生きる───。
『夢』の中の自分は、その願望のままに生きている。
なのに、この感覚はどうだろう。
目が覚めたら、『夢』の終わりに見た光景が目の前に広がっていて。
目の前には、『夢』で出会った人間がいて…。
信じたくない。
信じられるわけがない。
自分は『橘義明』だ。それだけは揺るがない事実。
どこからか聞こえてくる声がある。
声は言った。
────オマエハ『橘義明』ジャナイ。おまえは俺で、俺はおまえ。おまえは『直江信綱』だ。
また意識が遠のく。
おまえは誰だと問いたいのに────。
私は今、夢の中にいる。
暗闇の中、私は独り立ち竦んでいる。
夢の中では『私』は『私』ではなくなる。
『俺』は『直江』と───そう呼ばれている。
あとがき
ようやく、『橘』Sideっぽいお話です。
二重人格については、おそらく間違った知識で書いていると思うので、全てを鵜呑みしないようにご注意ください。
『恋人のなまえ』とか、『キャラメルエスプレッソ』とか二重人格がテーマのマンガを読んで、いつかこんな話を書いてみたいなあと思っていました。
もっと詳しく調べて、間違った箇所は修正したいと思います。
早く、三角関係なお話にしたいです。
2004.6.24 鷹夜那岐
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