「景虎〜。今日は俺んちで息抜きしようぜ。いいもん買ったからよォ。」
千秋からの電話だった。
ここのところ、各地の怨霊が騒ぎ出す気配もなく、高耶たち夜叉衆は久々の休暇を過ごしているのである。
忙しい時には休暇がとても恋しく思えたが、いざ、暇になってみるとやることもなくただ1日中暇を持て余していた高耶であった。
「大将、どーせ暇なんだろ?俺様がありがたくも誘ってやるっていうのによォ。」
怨霊調伏に行く以外に夜叉衆が集まるのは、滅多にない。
そんな暇さえもないほど、高耶たちのスケジュールはハードだったのだ。
(ここで行くって言ったら、オレがとてつもなくヒマジンみたいじゃないか…。)
たまにはみんなで息抜きもいいかもしれない。
しばらく考えたが、この際付き合ってやることにした高耶である。
「しょーがねぇな。つきあってやる。」
「んじゃ、8時くらいに俺んちに来い。直江も連れてな。晴家は俺が呼んどくから。」
「ああ、わかった。」
久しぶりの夜叉衆集合だ。なぜか楽しみにしている自分が恥ずかしくて、いつもより仏頂面な高耶だった。
メールの送信ボタンを押す。
最近、やっと携帯を持ち始めた(正しくは『持たされ始めた』)高耶は、ようやく一人前にメールが打てるようになった。といっても、イマドキの10代の少年少女の足元にも及ばないほどの早さではあるが…。直江に負けたくなくて、密かにメールの早打ち練習をしている高耶は、携帯を持ち始めた頃よりは上達している(と思っている)。
1分後、返事はすぐに返ってきた。
───分かりました。7時半頃に迎えに行きます。
直江の車に乗るのは好きだ。と、最近の高耶は密かに思うようになった。落ち着いた気分になれる。
ダークグリーンのウィンダムは時間通りに到着した。
(こいつらしい…。)
車から降りたのは、鳶色の髪の長身の男だ。
端から見るとかなりの男前だが、高耶の前では全く違った印象を受ける。
(なんつーか、かっこいいけどかっこ悪いというか…恥ずかしいというか…。)
─── 一度開き直った男ほど怖いものはない。
高耶の辞書には、そう記されている。
「高耶さん。あなたに会いたくて、大急ぎで仕事を終わらせてきたんですよv」
誉めてといわんばかりの笑顔だった。まるで、大型犬か何かのようだ。
───あなたの「犬」です。「狂犬」ですよ…。
そう言っていた直江が懐かしい。昔は牙を剥き出しにした獰猛な「狂犬」のようだったが、
今は、違う意味で「狂犬」のようだった。というか、狂人、いや、ただの変態…かもしれない。
いつのまにか、直江は高耶を抱きしめていた。好きあらば、人前でだって高耶に触れようとする直江は、顔に似合わず立派な変態である。
常識人の高耶は、直江のようにはなれない。
「な、直江っ!人にみ、見られたらどうすんだ!!放せって。」
真っ赤な顔で、懸命に直江を引き剥がそうとする高耶だが…。
「見せ付けてやればいい。あなたと私は、こんな関係だ、って。」
「おまえは…どこまでハズカシイ奴なんだ!放さねぇと…金輪際口聞かねぇし、会ってもやんねぇぞ。」
「……おまえとなんか、絶交してやる。」
(絶交だなんて、小学生みたいなこと言って…高耶さんは本当にかわいいヒトだ。)
と、思われて手加減されたことも知らず、高耶は『絶交』が、未だに直江の暴走を止める唯一の手段だと思い込んでいる。
解放された高耶は、素早く車に乗り込んだ。仕方なく直江も運転席に乗り込む。
ウィンダムは静かに動き出した……。
あとがき
えっと、これは戦国無双が発売されたあたりに想像で書いたお話です。
今となっては、こんな休息さえ有り得ない彼らですが、SSの中では仲良く楽しく生きてて欲しいなぁと。
今回は、『直高』ギャグに終わりましたが、次は本命「戦国無双」に絡んでまいりますので。
といっても、未だに戦国無双をしたことがないので、嘘だらけになりそうですが…。
大目に見てください。
2004.06.07 鷹夜那岐
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