2004.7.23────────ついに、その日は一週間後に迫った。 カレンダーを睨む一人の男の姿があった。男の名は───直江信綱という。 「高耶さん。今度の金曜日は休みが取れたので一日中家にいられますよ。土日も無理矢理休みをもらいました。」 珍しいこともあるもんだと、高耶は呆れ半分、うれしさ半分で思った。この不況の中、橘家は休む間もなく忙しい日々が続いているらしい。このご時世だ。就職難の若者にでも分けてやればいいのにと思えるほどの多忙ぶりだ。実家の寺では僧侶として、兄の経営する不動産屋ではその社員として……。 この時期は特に忙しいようで───直江はぼやいていた。 「高耶さんの学校が休みになったから、二人でいられると思っていたんですが…どうも逃げられそうにもないんです。 高耶さん、最後にあなたに会ってからもう一週間ですね。あなたに会えなくて、私は───」 「義明!檀家さんが相談に見えたから、早く来なさい!」 「────高耶さん、私は」 「直江、おふくろさん呼んでるだろ。早く行けよ。な?」 「───はい。また、時間が出来たら連絡します。」 「いいよ。いそがしんだろ?無理に電話なんかしなくてもいいから、仕事、頑張ってこい。」 「ありがとうございます。では、失礼します。」 いつもこんな感じである。 だから、今回の休みというのはとても久々のもので、直江にとっても高耶にとっても待ち遠しいものだった。 何せ、直江と高耶が一緒に過ごした最後の夜は、1ヶ月前に遡ってしまう。30代、男ざかりの旦那様と、19歳の若奥様(←まちがいw)には、1ヶ月というのは地獄のような辛い日々だったのである。電話ですることはできても、やはりもの足りないと二人は思ってきたのだ。 相手の肌が恋しいと、はやく触れたい、抱き合いたい、口づけたい。 そんな欲望が、欲求がとまらない。 高耶はカレンダーを見た。 「金曜───23日か…。ん?」 この日は何か特別な日だった気がする。それなのに、思い出せない。 「げっ、オレってばもしかして若年性痴呆症とか?やばい、やばすぎる。仮にも上杉の総大将が痴呆症なんて…千秋に知られたら絶対馬鹿にされるな。千秋には悟られないように───」 ♪ちゃーららっちゃっちゃっららーちゃーらららーちゃーららちゃーららちゃららー 不意に携帯の着メロが鳴った。ちなみに、曲は『blaze2002』。 ディスプレイに表示された名前を見て、高耶の顔が引きつった。 まぎれもなく、『千秋』と表示されている。 見計らったようなタイミングに戸惑いながらも、高耶は通話ボタンを押した。 「よォ、景虎、元気してっか?俺様がいなくてさみしかったろ?」 相変わらずの千秋節である。千秋とは大学が同じ為、休みに入る前まではよくつるんでいた。 「何か用か?」 「あいかわらず、カワイ気がねぇな。ま、それでこそおまえなんだけどな♪」 「で?」 「実はな…」 「?」 「いや、今度の土曜に晴家が飲み会しようとか言い出してな、で、おまえんちでやろうということに決まっちまって───」 「おい、家主のオレに断りもなく何決定しちゃってくれてるわけ?」 「晴家に言ってくれよ。あいつがおまえんち行きたがってたんだからよォ。」 「無理だっていったら?」 「理由は?」 「それは───。」 今度の金曜は直江が来る。ということは、その夜は、間違いなくアレだろう。ということは、土曜は足腰も立たないくらいに疲れてるわけで…。 「もしかして、俺らお邪魔だったりするわけか。そりゃそうだよな〜、金曜は直江にとっちゃぁ一大イベントだろうしな。そっかぁ、直江においしく食べられちゃうってワケか。お熱いこった。」 「な、なんでおまえが知ってるんだ?直江が金曜こっちにくること。」 「ぁあ?なんでって、普通考えりゃわかんだろーが。つーか、金曜何の日か覚えてねーの?」 「そ、そんなことあるわけないだろ。」 「だよなぁ。お偉い大将サマが、忘れるわけないもんなぁ。」 「あ、ああ。」 「景虎よォ、ホントは忘れてんだろ?てめーの誕生日つーか宿体のっていった方がいいかもな。」 「あー、そうだったな。」 「んじゃ、土曜は無理だな。せいぜい、がんばるこった。俺たちは邪魔しねーからよ。」 「ちょっと待て。オレたちは別に────。」 「金曜から3日間ぶっ続けじゃー、流石の大将サマもつらいだろうな。」 「な、長秀、いーかげんにしとけよ。んじゃ、土曜はオレんちこいよ。今後、オレ達二人を馬鹿にできないように、真実を証明してやる。」 「楽しみにしてるぜ、カ・ゲ・ト・ラv」 |
あとがき なんか、直高よりも、ちーたかになってしまってます。千秋と高耶さんの言い合い大好きなんです。 カップリングは「直高」、コンビは「ちーたか」がすきです。他のも好きなのいっぱいありますが。 2004.7.23 鷹夜那岐 |