─ 醒めない夢 ─


誰ガ為。
何ガ為。

四百年を生きてきた?

孤独に気が狂いそうになる夜も、
悲しみに哭いた夜も。

文字通り、身を削り、精神ココロを削り、魂までも削って。
肉体が死ぬとき、生きている者の魂を追い出し、肉体を奪いとる。これを繰り返す。
それが、換生者の運命サダメ

一体どれだけの魂が犠牲になっただろう。
「オレ」という人間が生きる為に。

──犯してきた幾千の罪と、
   背負わされた幾千の罰。
   数え切れないほどの罪を、    抱えきれない罪を、白く染めたい。
   何事もなかったかのように…。
   それが叶わないとわかっていても、そう願わずにはいられない。


幾百もの魂を殺し、肉体を奪い、幾千もの魂を調伏して…。

昔の仲間の救われぬ魂を救うため、集まった夜叉衆の面々。
救うどころか、今の仲間達まで犠牲にして、今のオレが在る。
親友トモを失い、部下を失い…

死すべき魂が生き、生きるべき魂が逝く。

そんな滑稽な世界。


血の繋がる父や兄までも手にかけた自分。
すべては、義父上のため…。

役に立ちたかった。かつて、オレを救ってくれた人のために。
誉められたかった。
認めて欲しかった。
上杉三郎景虎を。仰木高耶を。

だが、義父上は認めてくれなかった。
四百年の歳月を以ってしても…。
誰のための「生」だったのだろう。
少なくとも、自分のためではなかった。

苦しんでも、足掻いても……あなたのためだけに生きてきたのに…。

何故、オレではダメなのですか?
何故、オレを選んではくれないのですか?

あなたのために生きてきたのに…。
「景虎」の名を、義父の名をもらったとき、オレがどれだけ嬉しかったかわかりますか?
やっと自分の存在を認めてくれたと思ったのに。

オレは恩返しをしたかった。
だから今まで戦ってきたのに。

また、オレを捨てるのですか?
あの時のように!
景勝を選んだときのように!

今度は、直江を選ぶのですか!

オレはどうすればいいのですか!

義父上!

血の繋がりは信じない。
信じたのは、心の繋がりだった。
それさえも、否定しろというのですか?

誰よりも優しくて、誰よりも残酷な人。

それでも、オレは信じたい。
捨てられたのではない、見捨てられたのではない。

あなたは何も言ってくれない。
答えをくれない。

誰か教えてほしい。
オレがどうするべきなのか。
誰かに背中を押してほしい。

──誰か…。

ある男の姿を思い出す。
鳶色の髪と瞳を持つ男。
オレを愛し、オレを庇い、そして、死んだ男。
オレの愛した馬鹿な男。
地獄の底から迎えに来い。
そして、オレを殺しにきてくれ。
そして、考えよう。
もう一度。
オレたちの最上のあり方を…。
誰もいない、二人だけの世界で。

醒めない夢から解放してくれ。
オレを殺して…

この終わりのない呪縛の鎖を断ち切って…。


あとがき
今回は、高耶さんの叫びです。多分2・30分で書きあがりました。
『十字架を抱いて眠れ』辺りの話だと思ってください。
直高小説を書きたいのに、独白ものしか書いてません。しかも今回は、謙信×高耶(景虎)っぽい。
そんなつもりはなかったんですけどねぇ。
なので、最後に直江のことに触れてみました。
あくまで、管理人は直高派です。そろそろ、直高小説を書きたいと思ってマス。
20巻、せつないですよね。
せつない小説を目指したんですが、ひたすら暗い。何が言いたいのかわからない…。

2004.2.22  鷹夜那岐